経済指標

ファンダメンタルズ分析とは、様々な経済指標や経済的要因を分析することによって、為替の方向性を予測しようとするものでです。
ファンダメンタルズとは、一般に「経済の基礎的な要因」という意味になりますが、それらの多くはGDPや貿易収支、失業率といった様々な経済指標で表すことができます。

ファンダメンタルズ分析は経済指標から

為替相場に影響する外部要因として、最も注目されるものの1つが経済指標です。その中でも米国の経済指標の影響が最も大きく、米国指標だけ見ていればほとんど市場の動向をつかむことができるほどです。しかし、為替市場において他の市場参加者より一歩でも前を歩こうとするのであれば、他の国の経済や金融政策の動向も併せて見る必要があります。特に、最近では中国の経済指標に市場の注目が集まり始めています。
市場における重要な指標というのはその時代により変化し、また新たなものが現れます。知らないものがあればその場で調べて理解すれば良いことです。浅くても良いから広く知ることがトレーダーにとって必要であり、それがまたトレードの魅力でもあります。
主な経済指標は、多くの金融機関や経済シンクタンクなどから前もって予想値が発表されます(中国を除く)。しかし、その市場予想が全体に広がる時点では、プロの市場参加者の間では既にポジションの仕込みが終わっているなど、実は指標発表前に戦いは始まっているのです。ここでは、経済指標をデイトレを中心にどう活用していくかについてご紹介します。

指標発表スケジュールと予想値を前もって把握しておく

各国の重要と思われる経済指標は、その発表の約1週間前には大体予想が出揃います。FX業者などが発表する数値のほとんどは、ブルームバーグやロイターなどの情報ベンダーなどから発表されたものです。これらの情報ベンダーの予想数値は、各大手金融機関のエコノミストが発表する数値の幾つかを集めた中心値になります。予想数値は発表直前まで変更されることが多いため、小まめにチェックする必要があります。
各国の主要な指標のほとんどは発表の日程と時間が決まっています。重要な指標ほど市場は注目し、その発表前後では値動きが激しくなることがあります。為替相場では値動きがほとんどなければ利益になりませんので、値動きの活発な時間帯を狙うことが基本になります。稀に発表時刻がフライングして、予定より早く発表されることがありますので気をつけましょう。

経済指標は状況によって注目度が変わる

経済指標はその時々の市場の状況で注目度が変わります。例えば1980年代前半では、レーガン政権下の米国は高インフレを抑えるために金利が2桁台に上昇するなど、市場はインフレ関連の数字に注目しました。高金利政策によりドルが上昇すると、貿易赤字が拡大し経常赤字と財政赤字が拡大する、いわゆる双子の赤字が為替市場の注目材料となっていきます。
特に対日赤字が拡大し日本の貿易黒字額にも世界が注目し始め、その後の1985年のプラザ合意につながります。そして急速な円高が始まり、行き過ぎたドル安・円高の歯止めをかけるためにルーブル合意が行われます。しかしドル円の下落は止まらず、日銀のドル買い介入も頻繁に行われたことで、市場の関心は日本の外貨準備高にも注がれました。
95年にドル円は最安値をつけた後大きく反転し始めると、米国経常赤字は急速に減少し、そのことから貿易収支など経常収支への市場の関心は離れ始めます。その後は米国のITバブルが始まりNY株式が上昇。1999年にユーロが誕生すると、ユーロ圏の経済指標にも市場の注目度が高まりました。
米国のITバブルは2001年に入ると崩壊し、その後は米国の住宅市場で再びバブルが引き起こされ、米国の金利動向に注目が集まりました。そして、サブプライム問題が発生し、世界的な金融経済の不況に陥り、それによりデフレが強まるとインフレ指標などへの注目度は低くなりました。
一方で、米国の雇用や住宅、そしてGDPなどの改善が見られるようになり、住宅関連及びそれまで注目度の低かった指標に対しても、市場は反応するようになりました。しかし、ここにきて量的緩和による景気回復が本格化し始め、金融政策の転換時期を探るために、再び失業率や消費者物価、個人消費などのインフレの動向を示す指標などが注目されるようになりました。
このように、時代の移り変わりによって、経済指標に対する市場の注目度も変化していきます。

経済指標の数字をどう見るか

経済指標の発表は市場参加者にとって相場を左右する重要なイベントですが、政府など当局にとっても今後の政策決定のために重要なものです。したがって、発表された数字が市場参加者のポジションに与える影響もさることながら、今後の政策にどう影響するのかなど、先々を考えて反応することも重要です。
経済指標の見方にはポイントが幾つかあります。それは数字を前月比(前期比)で見るのか、前年比で見るのかということです。これは市場の状況にもよります。例えば、市場がリーマンショックの前のレベルにまで戻るのかどうかに注目している場合は、前年比が注目される時があります。前年比で見る必要がある指標は、基本的に前月比と前年比の数値が必ず同時に発表されます。

比較か方向性かのどちらかを見る

これは市場は「比較」か「方向性」かのどちらに注目しているかということです。例えば前年比で悪化した数字が発表されると、市場は売り材料と捉えます。しかし景気底入れの期待が大きい時などは、市場は方向性に重点を置くことがあります。例えば前年比ではなく前月比で見て過去数か月の悪化の度合いが小さくなってきたという場合、方向性を重視している時には底入れが近いと捉えて買いのアクションを起こします。
マニュアル通りに動くのではなく、市場のセンチメントを見極めながら臨機応変に対処していくことが重要です。
景気回復傾向が強まる市場では、方向性よりも前回の数字に比較して改善しているかどうかを重要視する傾向が見られます。反対に景気の見通しが不透明の時には、方向性を重視することが多く見られるようです。

多くの経済指標は発表時に織り込み済み

経済指標はいつ、どこでどう反応するのでしょうか。前述したように指標の予想値は一斉に同時間に発表されるわけではありません。その数字は少しずつ市場に浸透していき、いつの間にかその数値が当然のように広がって識り込んでいることがよく見られます。
例えばほとんどの金融機関のエコノミストが、次回のFOMCで量的緩和を縮小すると予想したとします。しかし市場では前回のFOMCや複数のFOMCメンバーの発言などをペースに、既に量的緩和の縮小実施を予想している場合がほとんどです。したがって発表されたとしても、市場では織り込み済みという状況が多く見られます。その予想が広がった時点では、早くも全般的にドルの買いが進んでいることが多く、その結果底堅い動きが見られるはずです。このように、予想が広がった時点では既に織り込まれていると考えるのが基本です。しかし、これが常に当てはまるとは言えません。市場は何%織り込み済みかといったような実際に「数字」で表すことができないため(一部の情報ベンダーでは複数のアナリストの意見を数値化しているところもあります)、感覚でつかむことが大切です。重要なことは、市場が実体以上に織り込み済みなのか、あるいはまだ十分に織り込まれていないのか、ということです。それを読み取ることがデイトレの勝負の分かれ目になります。

指標発表前と発表後に相場はどう動くか

米国の主な経済指標は、22時30分と24時(夏時間では21時30分と23時)に発表されます。特に重要な指標は金曜日に発表されるため、週末ということもあってポジション調整の動きが活発になります。そういう時は織り込み済みかどうかを確かめることができます。
重要な指標であるほど、発表日の前日あたりから調整の動きが見られます。一般的に買われ過ぎている時は売り戻し、売られ過ぎている時は買い戻しの動きが活発に見られるようになります。そして、発表当日の東京市場から欧州市場に移る時間帯などは、ポジションの振り落としを狙った投機的な動きも加わり、売り買いが交錯する場面もあります。ただ、指標の発表される1~2時間前あたりから流動性が低くなり、値動きは極端に小さくなります。この時市場の短期的ポジションはかなりニュートラルに近くなっていると見てよいでしょう。
ただ、一部の市場参加者では、あえて指標の発表を前に短期ポジションを仕込むようなギャンブル的な動きをするようなところや、発表と同時に力ずくで自分の有利な方向に誘導しようとする動きも見られます。これは、市場が最初に動いた方向についていきやすいという習性を利用しようとするものですが、このような投機的な動きはすぐに戻されることが多く、後から追いかけていくとやられることがあるので注意が必要です。ただ、スキャルピングではむしろこの動きを利用するやり方もあります。指標発表前の静かな状態の時に、実勢レートの上下に逆指値注文を入れておきます。例えばドル円が105円00銭の時に105円20銭に逆指値の買い注文を入れると同時に、104円80銭に逆指値の売り注文を入れておきます。重要指標の発表の時は一方向にポジションが偏りやすいものです。もし予想に反した数字が発表されれば、どちらかに1円以上跳ねるのを期待した仕掛けです。しかし、これには問題があります。
それは値動きが急なため、スリッページが起こりやすいことです。そのような場合はむしろ損失が出る可能性も生じますので、あまりお勧めできません。短期決戦の博打的な方法と言えます。相場というものは時間が経てば行くべき方向へと最後は向かうもので、投機的なものは少し遠回りさせるだけと考えます。また、時には発表された指標が予想を上回る好数字であった場合でも、既に織り込まれ過ぎた場合は、それ以上買われずに逆に売られる場合もあります。その反対の場合も然りです。発表後にじっくりと方向性を確かめた上で取引を行うことをお勧めします。