為替相場を動かす要因

為替相場は様々な要因の影響を受けます。それらを長期、中期、短期で分けて頭に入れ、自分なりのイメージを持つことが大切です。

外国為替相場を動かす主な変動要因

為替レートは交換する2つの通貨の需要と供給で決まると言って良いでしょう。為替レートは時間の差こそあれ最終的にはそれらの需給によって収まるべき場所に向かおうとします。その需給に影響する要因は同時に為替レートにも影響することになります。

長期的な要因

時には数年の長期に渡って相場に影響を与えるものです。これらの動きは長期トレンドを作る要因にもなり、この動きを知ることは長期投資を行う際にも重要なポイントになります。

金利差

世界の投資家にとって最も高い関心事の1つが金利です。特に日本のような低金利の長く続く国から見れば、高金利の通貨は魅力的です。2008年夏までは円を売って豪ドルなどの高金利通貨を買う円キャリー取引が流行し、為替相場に大きな影響を与えました。金利差は為替相場の最も大きな変動要因と言えますが、市場が不安定な時には金利よりも安全な通貨に資金は流れます。金利相場が始まるのは市場の安定化が条件となります。通常、金利の指標となるのは各国の中央銀行が発表する政策金利です。

国際収支

国際収支は経常収支と資本収支に大別されます。例えば、円と米ドルの為替相場の変動が需給で決まるとするのなら、日本と米国の間の国際収支で決まると言えます。経常収支には輸出入の差額である貿易収支や、旅行や保険などの貿易外収支に分けられます。また、資本収支には証券投資や直接投資が入りますが、1年未満の短期資本収支と1年以上の長期資本収支のような貸借の動きが、相場の大きな変動要因になると考えられます。

中期的な要因

数か月、時には1年以上にわたり相場に影響を与えるものです。これらの動きをできるだけ早く見極めることができれば、中期的なトレンドに乗ることができます。

中期的な投機マネー

ヘッジファンドや政府が出資する投資ファンド(SWF)などは、大規模な投機資金を運用し、時として市場を大きく動かすことがあります。1997~98年のアジア通貨危機は、ヘッジファンドがタイバーツといったアジア通貨に対し巨額の売りを仕掛けたことで暴落が起きたと言われています。また、生損保などの機関投資家は、為替の動向次第では外債投資のリスクを減らすために買っていた外貨のヘッジ売りを掛けたり、あるいは掛けていたヘッジを外したり、ディーリングを行うことも相場に影響を与えます。

各国の通貨政策

1971年のニクソンショックのような固定相場制から変動相場制への移行や、1985年のプラザ合意のような大幅な通貨調整を行うような時には、各国が協調して為替を誘導、あるいは介入を行います。これは相場に大きな影響を与えます。

経済指標

経済指標は各国のファンダメンタルズを示す最も重要なもので、特に米国の経済指標は注目されます。重要な指標は金融機関のシンクタンクやロイターなどの情報ベンダーが、事前に調査による予想値を公表します。市場はその予想を元に前もってポジションを持つために、織り込み済みとなることが多く、実際に指標が発表された時点ではむしろ反対の反応を示すことも見られますので、注意する必要があります。

政治情勢

戦争や内乱、政治不安などに陥った国は経済的な混乱も予想され、資本が国外に流出することになればその通貨は売られます。かつては中東で紛争などが起こると「有事のドル買い」と言われたこともありましたが、最近では9.11テロやイラク戦争などのように米国自身が当事者となることが多く見られるせいか、反対にドル売りに反応することもあります。

短期液な要因

これらの要因はあくまで短期的で、瞬間的に大きく上下することがありますが、落ち着いてくると元のレベルにまで戻ることが多く見られます。そのため、後追いをするとケガをすることが多いのが特徴と言えます。

短期の投機資金

銀行や証券会社、その他の金融機関などは自己資金で短期の為替の売買、いわゆるディーリングを行います。また、商社やメーカーの中で、思惑で自己売買を行う会社もあります。最近では個人のFX取引が拡大しており、これらの取引も市場を動かす要因と見られるようになりました。

要人発言

その国の金融政策担当者や政治家などの当局者が自国の通貨を誘導することを目的として、あえて発言したり、言ってはいけないことを失言した時などは一時的に相場が大きく振れることがあります。短期的にロ先介入として行うものや、プラザ合意のように通貨政策の一環として各国が協調して誘導しようとする時もあります。あまり何度も繰り返すと、市場の反応は鈍くなります。

地政学的リスク

ニューヨークで9.11テロが起きた時には、ドルが大きく売られる場面がありました。このようにテロや戦争が起こるとその当事国だけではなく、近隣諸国からも資金が流出するため、一時的にそれらの通貨は売られやすくなります。反対に、流出した資金はテロや戦争などと関わりが少ない安全な通貨へと向かうため、安全な通貨は高くなると考えられます。

噂、流言、思惑や期待などの心理

どこかの国がデフォルトに陥る危険性があるとか、あるいは格下げの噂や流言などでその通貨が大きく上下することがあります。また、例えばある海外企業が米国の企業を買収するという報道などがあると、これから大量のドル買いが発生するといった思惑が働き、事前にドルを買う動きが起きたりします。このように事実が発表される前に思惑だけで売買が行われると、市場は一時的に大きく反応することがあります。このような噂や思惑などで動く場合の多くは投機的な動きが中心となるため、短期間に元のレベルに戻ることが多く見られます。

為替相場の予想は極めて難しい

以上が為替相場の主な変動要因ですが、もちろんこれだけではなくその他にも相場を動かす要因はいろいろと考えられます。
ただし、ここで大切なのは、これらの要因がどのくらいの期間為替相場に影響を及ぼすかを頭に入れておくことです。変動要因をあえて長期、中期、短期という期間に分けて見ることで、資金の時間的な移動がイメージとして捉えられると思います。このようなイメージを持つことは、FXでのポジションの持ち方にも参考になると思います。例えば短期的な要因で市場が大きく動いたにもかかわらず中期的な動きとして捉えてしまうと、ポジションの手仕舞いが遅れたりして損失の拡大につながることもあります。逆に中期的な動きの要因に対し短期的なものとして判断してしまうと、トレンドと反対のポジションを持つことにもなりかねません。また損切りや利食いなど、決済タイミングをその時にすべきかどうか、あるいはここで新たなポジションを作るべきかといった判断にも影響します。
また変動要因は、その時の状況次第では短期的な要因だと思われたものが中期的なものに変わることもあります。長期的は要因と考えられたことが中期になることもあります。ご自分でその都度その他の色々な情報を見極めて判断することが必要になります。
その時の市場参加者の心理次第で、なんでも無いと思われる材料でも相場が動くこともあります。また、購買力平価といった相対的関係などでも相場に影響を与えることもあります。他の市場に比べ外国為替相場を読むのが難しいと言われる背景には、このように多くの変動要因があるからかもしれません。それは株などのように国内要因だけではなく、他の国の政治や経済などからも影響を受けるためです。いずれにしても相場は市場参加者のコンセンサスがなければ動きません。